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ITコーディネータ 針生徹 の blog
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自分探しが止まらない/速水 健朗

ブログを始めた頃(もう4年前かぁ)はあちこち読み歩いていて、この著者の所も定期的に訪れていたからそれなりの期待を持って読んでみたところ、予想以上のプロの仕事でしたな。
中田英寿やイラク人質事件などのバックパッカー・外こもり、19 世紀に生まれたニューソートという思想を源流とする成功哲学・自己啓発の系譜、フリーター増加の背景、自分探しビジネス、世代間の価値観の違いなどを丹念にまとめてあり、社会や文化に「自分探し」がいかに浸透しているのかを分析している。

ただし、「だからどうしろと?」 には答えていない。
 本書が自分探しの若者をテーマにしながらも、彼らをそこから救うような手だてについて何ひとつ提示できていないことは気がかりではある。
P.217 あとがき
膨大な資料を集め、咀嚼し、時代背景や当事者の心理を理解しながらも客観的な批評の目に徹した姿勢を見るだけでも「自分探しが止まらない」人々にとっては価値があると思うけど、落とし所についてはかなり悩んだようですな。

前向きに生きる姿勢について - 【B面】犬にかぶらせろ!

決めろって言われても決められない人達なんだからねぇ。 ま、いいんじゃね

どこかに答があると思ったり、未だ開花していない潜在能力をアテにしたりして安易な現実逃避に走ると「自分探しホイホイ」に引っ掛かっちゃうよって警告するのがせいぜいだと思うよ。それに、ダンコーガイ氏みたいなマッチョだらけの世の中ってのもどうかと思うぞ。いや、それはまずあり得ないけど。

さて、ワシの時代には「自分探し」という言葉は無かったかもしれないが、この本で描かれているのはワシか? と思うほどずっとそうやって生きてきた気がする。十代でちょっと道を外れたのは通過儀礼としても、大学へは行かずに今で言うフリーターとして職を転々とし、それなりに楽しかったけどなんかこのままじゃダメだと突然思い立って地球の裏側を放浪してみたが、結局何も掴まないまま逃げ帰ってきたくせにちゃっかり老舗の四代目なんかに納まったものの、でもやっぱり違うとヤクザな商売を始めちゃったり… そう言えば、本書でも解説されているライフダイナミックスの自己啓発セミナーにハマったこともあったなぁ。いやワシはハメた方だったっけ。その節はお騒がせしました。

さすがに半世紀も人間やってればいい加減「今の自分じゃない自分」などどこにも無いことは散々思い知らされてきた訳であるが、逆に「日々生きる事」それ自体が自分探しなんじゃないかとも思うようになってきた。

会社作ってから 20 年目、結婚して 16 年、こういうのを「決める」というのならば、その通りきっちり守ってきたし、これからも続けていこうというのは揺るがない。でも、その中で少しでも多くの満足を得られるように、またそれを周囲にも返していきたいとも思う。その為に、今日は何をするか、明日はどうしたいのか、いつも悩んでいる。

まぁこれは、判断基準となる「自分」は既に決めた上で、単に選択肢を探しているのであって、本書や書評で論じられている対象とは次元が異なるのかもしれない。でも、これだって上に並べたような現実逃避を重ねてみて、逃げ続けるのに疲れた果てに会得した術なのである。逃げるのって結構体力要るからね。弾氏の言う 0x20 歳辺りってのはそういう意味でも妥当なところなのだよな。 ま、カズや桑田のようにボロボロになるまで現役を続ける根性があれば最初から自分探しなんてやらないか。

ところで、こうやってブログを書いたり、読んだりするのも、現実逃避という面は大きいのだけど、「こちら側」だけでは考えられなかった可能性、いや実際色んな出会いがあって、刺激を受けて気付きを得るという自己啓発的な意味だけでなく、コミュニティや仕事面でも世界が広がり、新たな自分を発見したりもしている。

ただ、情報起業をはじめとして、梅田教もそうだし、GTD やら Lifehacks やら、「自分探しホイホイ」的な物が溢れているのを見ると、「こちら側」よりも敷居が低い分、本書で警鐘を鳴らしている事態はさらに深刻になってきているような気もする。

若者が「現を抜かす」のは世の常だとしても、それが止まらないってのは問題だな。上の世代が「今日はこんな美味しいもんを喰いました」って消費で自己実現している姿をブログで晒してるのと大した違いは無いようにも見えるが、好きなことやりたいなら少なくとも何らかの生産力に勘定された上でやれよってことだね。「ホイホイ」に夢を掠め取られて非生産的な時間だけを得るってのは社会の損失かもしれないよ。

で、「だからどうしろと?」に答えないとオチないのだが、とりあえず無限ループの終了条件を満たせないのならばどこかに GOTO 文を混ぜとくってのはどうだ? って、結局は弾氏と同じになっちゃうか。 すまんな、ワシも未だ探している途中なのでね。

関連リンク
【速水健朗氏インタビュー】拡散する自己啓発と自分探しムーブメントを読む
【A面】犬にかぶらせろ!
【B面】犬にかぶらせろ!
by HarryBlog | 2008-03-02 11:46 | Books | ↑Top  
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針生 徹

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