ワシは科学エッセイとか科学史とか大好きで、アシモフ博士などは 20 冊ぐらい持っていたりするんだが、日本人でここまで興奮させてくれる科学者は珍しい。
ちょっと文芸調なのが鼻に付くところはある。題材そのものが興味深いし、それを巡る科学者達のエピソード自体が小説より奇なりなのだからもっと醒めた語り部に徹しても良かったと思うが、本人も当事者だからそうもいかないのかな。まぁ文章は上手いし、構成もドラマティックで、それで読ませるところもあるのだけどね。
まぁそういう表面的な事よりもやっぱり内容が面白い。ある程度年齢や経験を積んで、単に書いてある事そのものだけでなく、色んな物に類推が及ぶほど楽しめると思う。
秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。
開放系の動的な平衡状態こそがエントロピー増大に抗う唯一の道ってことだな。企業とかシステムとかネットとかも全く同じ。やっぱり生き物だったのかぁ。
内部の内部は外部である
うぉ、境界を維持しつつ外部と相互作用する為にこんな巧妙な仕掛けがあったなんて。
そして、著者を含めた登場人物達のドラマ。科学界特有の厳しさはあるのだろうが、どこの世界だろうと成功も失敗も積み重ねて次へ進む訳で、これもまた動的平衡。歩き続けること自体に意味があるのだ。時を経ることでしか得られない物があるのだから。