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ITコーディネータ 針生徹 の blog
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高井戸から都内へ向かうと、今度は調布方面から来た本線と合流し4車線になる。バイクなら1車線に3台、と言うより車線など関係無く蛇行しながら道一杯に広がって走る数百台。圧巻である。

音も凄い。集合の直管は1台でも喧しいのに、それが夥しい数重なるとまるで地の底からの叫びのように、その場の空気全体を振るわせる。それが数キロに渡って続くのである。

下高井戸で井の頭通りへ抜ける車線、首都高へ乗る車線が別れ、再び2車線の立体交差へ入り、4車線分に広がっていた台数の密度が急に高くなる。

間に挟まれた一般車も一緒に流れに乗るしか無い。「な、なんなんだこれは~?」訳が分からないまま、逃げ場の無い立体交差へ吸い込まれ、車線間、そして壁との間を次々に擦り抜けていくバイクの爆音に取り囲まれる。

左車線を走っていたタクシーの右側を一際大きな音が響いた。ビクっと思わずハンドルを避けてしまう。あ、左側からもバイクが来ていたのを忘れていた。

「まずい!」と思う間も無く、ガン! ガガッ! …接触してしまったようだ。と言ってこの状況で止まる訳にはいかない。バックミラーを覗くと、一瞬乱れて小さくなっていった隊列が、怒ったように迫ってくる。

丁度大原交差点に差し掛かっていて、奴等は新宿方面へ向かう坂を下っていく。助かった!
と思ってタクシーは環七へ抜ける。しかし、後続の数台は本隊を離れてこっちを追ってくるではないか。「おい、お前ら違うだろ!」

心臓に冷や汗をかきながらも、「俺だって運転でメシを食ってるんだ」というプライドがもたげてきたのか、タクシーは後輪をドリフトさせながら右折し、大森方面へ全速で逃げ出した。

昼間じゃ全く動かない環七だけど、この時間なら逃げ切れる。と思ったが、バイクとでは勝負になりっこない。あっという間に追いつかれ、慌てて梅ヶ丘通りを淡島方面へ曲がる。ここも空いていたので 100km 近いスピードで逃げる。道が狭い分、いくらバイクでも簡単には追い越せない。 と言って、どこへ逃げれば助かるんだぁ?

渋谷が近付くにつれ、さすがに車が増えて飛ばせない。遂に駒場辺りで追いつかれ、前を塞がれてしまった。

続く
by HarryBlog | 2006-07-30 21:26 | Teenage | ↑Top  
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針生 徹

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