電話しながらふと机の上を眺めるとノート PC が動いたような気がした。
有り得ない、と思って手を伸ばしてみると、なんと逃げるように浮き上がりそうだった。驚いて受話器を放り投げ、両手で捕まえてみると、イヤイヤをするように震えてやがる。ハードディスクがなんか噛んでしまったか、と焦りながら裏面を覗いてみると、排気孔に何やらうごめいている。それも一カ所だけじゃなくて、まるで蜂の巣みたいに開いている穴の全てに居るのだ。と思っていたら、それは本物の蜂の子であり、廃熱のお陰だろう、見ている間に立派な羽と針を持つ成虫へすくすくと育っていった。
昔、蜂の巣にボールが当たって 13 箇所も刺された痛い想い出がよぎり、ウギャっと声を上げて PC を投げ出す。床に激突して大破、という予想に反し、PC は浮遊している。巣の奧から次々と飛び出てくる無数の蜂が団結して羽を奮わせているらしい。だが、さすがに A4 フル装備は重いから疲れ果てたのだろうな。テーブルに軟着陸する寸前、女王蜂とおぼしき一匹に率いられて全員一気に窓外へ飛んでいっちゃった。
あのまま乗っ取られてしまえば、もう仕事しなくて済んだのに…