【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり
ワシの隣に座ってる奴、どっかで見たことあると思っていたら、
あの時の隣中のヨーラン野郎じゃねぇかよ。中ランにサイドバックじゃ、すぐには気が付かなかったよ。と思ったら、なんか下北で降りて同じ方向へ歩いてやがる。隣中なら電車乗らないでもいい筈なんだが…
結局、ワシの家から数百メートルしか離れていない所が奴の家、水道屋だった。ふ~ん…
こいつがねぇ、ワシの青春をあらぬ方向へ持っていくことになる張本人なんである。学校では真面目なフリをしていたようだが、過去を知っているワシには通用しませんぜ。
「俺ぁ寄る所があるから…」
なんだよ、怪しいな。ワシも行くぜぇ。
下北沢駅にほど近いが、クルマも入れない裏通り。今にも倒壊しそうな古いアパートの階段を登っていく。外の明かりが遮断された暗い廊下の突き当たりのドアを空けるとモァ~っとタバコの煙が溢れ出てきた。
恐る恐る中を覗いてみると、
なんじゃこりゃ~!!
見るからにガラの悪いのが十数人、一斉にガンを飛ばしてくる。十数人って…この部屋どう見ても四畳半なんですけど…
男達は窮屈な空間の中で談笑しているが、制服の柄が違う所を見ると、それぞれ別の高校から集まってきたらしい。ウチのクラスにも
変な 奴が多いと思ったが、こうして各校代表を揃えたのと比べると可愛いもんだったんだねぇ。
「上がんなよ」
この部屋の主らしい男の笑みに気を許したのが運の尽き。上がるったって、足の踏み場も無ぇじゃんかぁ。仕方なく、窓枠に腰掛けると、そこにも既に
先客が居た。
「よろしくな」
不良と言うよりはナンパ師っぽいが、とても同じ高校生には見えねぇぞ。一応挨拶は返したものの、なんか場違いな所へ足を踏み入れてしまったなぁ、と手持ち無沙汰に窓の外を眺める。
するとそこへ、
バリバリバリリッ
ハスラーの空気を引き裂くような2ストの甲高い響きとともに登場したのが
Bob であった。
(
続く)