前回まで:
ウォーミングアップ
前回の会社へ新しいマシンの導入が決まったのは、結果的に見ればトップ会談が決め手になったようだが、交換条件のような形でシステム開発の仕事を斡旋され、それをワシが請け負うことになった。
岩手県の小さな村、急行八甲田で通い、土木作業員が寝泊まりする古い旅館というより民宿に泊まる。中には広い屋敷の空き部屋を利用したところもあり、部屋が広すぎてストーブが全然効かなくて震えながら寝たこともある。
4社 10 人ぐらいのプロジェクトだったが、何もかもが初体験で新鮮だった。業務も初めてだし、ユーザーの話を聞くのも興味深かった。岩手弁を解読するのには難儀したが。
徹夜も続いたが、若かったし、なんか次々にトラブルが起こるのがお祭りみたいで楽しんでいた。ワシが犯人のことも多かったのであるが、原因を追及して解決できたときは達成感がある。
なにしろ、それまではコンピュータを触るのはお勉強だった訳で、それでお金を貰う、それも味噌だったら毎日 200 個ぐらい売らなきゃ得られない売上になるし、利益率も桁違いってのが驚きだった。
当然それに見合う成果を上げなければならない。納期・品質を守るのはもちろんのこと、エンドユーザーが満足できるように最後まで面倒見たり、元請会社への引き継ぎドキュメントもきっちり仕上げる。
作業時間を考えたら大赤字だったが、当たり前のことをちゃんとやると評価は得られる。元請会社からも、そしてこの仕事をやるきっかけになったコンピュータメーカーからも、次の仕事の話が来るようになったのだ。
こうして、これで食っていける見通しが立ちそうになった。味噌醤油販売は既に従業員に委譲していたし、会社も不動産賃貸で安定収入を得られるようになったので、その地権者へ大政奉還し、その退職金で新会社を設立することにしたのだ。