ITコーディネータ 針生徹 の blog
修行時代2:丁稚奉公
 前回まで:岐路

今ほどではないが新興ブランドとして売れ出したナイキ、その製造工場であった台湾の会社が自社ブランドとして作ったジョギングシューズの日本での販売権を取得し、輸入から販路開拓まで一人でやってきた社長である。

早くに結婚し、子供も二人いる。二十歳の洟垂れから見ると、年齢差以上に大人だなぁという実感があった。しかし、ちょっとどころかかなり偏屈なんである。

自分一人で城を築き上げた創業社長はそういう傾向が大きい、というのは今でこそ沢山見てきたから知っているが、数社しか知らない当時は人を見る目なんてまだまだ頼りない。

ワシがそれまで勤めた所は大手の下請けであり、直属の社長よりも、発注元からの指示で動いているような感じだったし、仕事自体も定型的で、特に運送屋などは外へ出てしまえば独りだから、人間関係で悩むようなことも少なかった。

ところがここは3人しか居ない。毎日ツラを付き合わせてやっていくしか無いのだ。

社長はさすがに色んなことを知っているし、修羅場を潜り抜けてきた重みも感じる。だけど、こちらも同じように全て分かっているという前提で指示出すのは止めて欲しいな。なにしろ素人なんだぞ。手取り足取りとは言わないが、どうやって覚えていけばいいかぐらいは教えてくれたっていいじゃんかぁ。

営業に一緒に付いて回っても、雑談しているだけである。客先ではそれなりに愛想を振りまいておいて、事務所へ戻るととたんに不機嫌な顔になり、「今日の話に出てたアレ、調べて仕入れて来い」などと突然言われたって、どこから何を幾らで買えばいいのかさっぱり分からない。

どうやら、「最近はこういうのが売れてますね」というお店の人の話から、「そういうの」をウチでも扱おう、ということらしい。そんな雑談から商売のネタを作り出す能力を鍛えようとしてくれているのだな。とてもそうは思えないが。

今のようにインターネットがあれば楽だったろうが、当時の情報源はポパイやホットドッグなどの雑誌ぐらいで、後は実際に街に出てトレンドを掴むしか無い。そういう意味では遊びも仕事のうちみたいなところがあって、実際社長はいつも遊んでばかりいた。

人脈も豊富で、怪しい人達も含めて、狭い事務所に入れ替わり立ち替わり色んな人間が出入りしているのだが、彼等もまた情報収集に遊びに来ているのであり、実は商売敵でもあるのだ。

ワシは元々無口なお陰で迂闊に洩らす危険は少なかったが、流行り物は早い者勝ちであり、取引相手だろうが友達だろうが、抜け駆けや廉売は日常茶飯の世界なのである。

こうして OJT を重ねていくうちに、ワシも徐々に馴染んでいった。でも、複数の人から「君はお宅の社長によく似てるね。見込みあるよ」などと言われると複雑な気分だった。ああなっちゃうのかぁ?
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by HarryBlog | 2004-11-21 00:43 | Training | ↑Top  
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針生 徹

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