ITコーディネータ 針生徹 の blog
カテゴリ:Teenage( 19 )
| ↑Top  
【19】異国情緒
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃
【13】出頭 【14】釈放 【15】ディスコ 【16】黒い人々 【17】業務提携 【18】遠征

よ~し次行くぞ! 気勢を挙げて再び出発。ふと見ると警察署のすぐ近くだったのねん。早速サイレンが聞こえたが、現場へ向かったのだろう、だんだん遠ざかっていった。

もはや他所者には今どの辺りを走っているのかさっぱり見当も付かなくなっており、いつまた突発的に祭りが始まるかもしれないと気を張りながらも、ただ集団の流れに付いていくだけであった。前を走るローレルのボディの向きが、どう見てもタイヤの進行方向とズレているのが可笑しくてしょうがない。クルマまでお笑い芸人なのか。

ぐるぐるとしばらく走るうち、反対車線で数台のパトカーの周りに人集りができている所へ差し掛かる。事故でもあったのかと近付いていくと、なんか見覚えがあるような気がして、よくよく見渡してみれば、なんとさっき襲撃した場所なんぢゃねぇかよ~

ホシは現場へ戻ると言うが、ついさっきの話だぜぇ。ったく関西人の思考回路は理解できん。

さらに我が同盟は一斉に空吹かしで威嚇し、わざわざおまわり目掛けて突っ込むように煽りをくれて挑発している奴も居る。そう言えば、交番へ火炎瓶を投げ込んだという報道もあったな。どうやら警察という存在に対する意識が関東とは根本的に異なっているらしい。

対するサツだって極道者と区別が付かないような奴ばかり揃っているのが関西なんである。ガキにおちょくられて黙ってる訳にはいかないと怒ったように追ってきた。呼び寄せた仲間もあちこちから行く手を阻もうとするが、間髪タイミングが合わず、最後尾へ回された無数の赤色灯を引き連れた大名行列が続いていく。

港の側だろうか、車線が広くなった所で回り込んでこようとするパーカーにつられて全体のスピードが上がっていく。一応客分の身ってことでバイクががっちりブロックしてくれていたが、お気遣いは無用、町中のチェイスならば任せなさい。

対向車が空いたところを見計らって一気に加速する。このスカGの 3rd の伸びには毎度のことながら痺れる。ミラーを覗くと既に赤いざわめきは彼方の点となっていた。そのまま先頭集団に混じり、繁華街を高速で抜けていく。

こうして浪花の祭りは朝まで続いていくのであった。

(続く)
[PR]
by HarryBlog | 2007-01-29 00:18 | Teenage | ↑Top  
【18】遠征
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃
【13】出頭 【14】釈放 【15】ディスコ 【16】黒い人々 【17】業務提携

東名を西へ向かう黒のハコスカ。足周りと排気系のみチューンした GC10。シングルカム、シングルキャブながら L20 直列六気筒は高速クルージングで安定した力を見せてくれた。

それでも、やはり大阪は遠かった。かなりの平均速度で飛ばした筈だが、名神の出口に着いたのは朝のラッシュが始まる頃になってしまった。料金所をいつものように 抜ける と、その先の阪神高速が渋滞していてちと焦る。まぁ逆に多数のクルマに紛れられたようで、なんとか天王寺でT兄弟と落ち合うことができたのであった。

とりあえず彼等のヤサで休ませて貰う。仮眠しようとしたが、家族全員が吉本芸人である関西人の家でそいつは無理な相談ってもんだ。機関銃のように誰かが喋り、一々それにツッコミを入れて大声で笑う。う~ん、このパワー、やはり外国である。時差ボケも致し方なかろう。

陽が落ち、顔見知りとなった特攻姿が揃ってきたら、生駒山へ向かう。それほど標高は無さそうだが、結構きついカーブの連続を登った頂上からの夜景はなかなかの見物であった。恰好のデートスポットなのだろうが、土曜の夜は避けた方が無難なようだよ。

轟音を響かせながら次々と集まってくるバイク、四輪。見慣れた光景ではあるが、知らない土地で見るとまた新鮮なもんだ。連合ということで、紺とか臙脂とかチーム毎に異なる纏い、旗もステッカーも初めて見る物ばかりである。自己顕示欲を歪んだ美意識で表現するこの人種の特徴は全国共通だったが、関東よりもどぎつさを競っているように感じたのは偏見だろうか。

さて、各チームが揃ったら街へ下りる。台数的には Emperor 単独の集会の方が多いぐらいであるが、それでもやはりド派手なのである。特に中心となっている生野連合ってのが自分達以外は全て敵という武闘派であり、当然ただ爆走するだけでは納まらないことになる。

目の前を走っていた数台が突然止まり、信号待ちをしていたクルマに襲い掛かる。何が何やら事情は分からないまま、ここで遅れを取ったら関東の名折れとばかり負けずに祭りに参加してみる。あっと言う間にボコボコにして一丁上がり~

続く
[PR]
by HarryBlog | 2007-01-28 21:57 | Teenage | ↑Top  
【17】業務提携
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃
【13】出頭 【14】釈放 【15】ディスコ 【16】黒い人々

70 年代後半、相変わらず暴走族同士の抗争は毎週各地で繰り広げられていた。

七里ヶ浜事件、大井埠頭事件などが新聞を賑わせるとさすがに警察も威信を賭けて取り締まりを強化するようになり、次々と検挙者を出したチームの解散宣言が報じられるようになる。それらの多くは偽装であったが、世間の目は確実に厳しくなっていた。

単に走りが好きなチームですら存続が危うくなる、共同危険行為禁止を含む改正道路交通法の施行を目前にした 1978 年春、下北沢へ大阪から一人の男が訪れてきた。

ヤサ男風であったが、ときおりサングラスの奧の目を鋭く光らせながら、柔らかな口調の関西弁で語る。関西も乱立するチームが過激な抗争を繰り返しているが、今は如何に生き残るか考えるべきであり、それには団結しか無い。関東と関西が手を結べば警察も簡単には手出しできないようになる、と。

ヤクザのようなシノギがある訳じゃなし、全国組織になったところで警察に対抗できるようになる筈も無いだろう、と今なら思うが、滾る若者の血を抑え付けようとする権力におとなしく従うようなら族などやっておらず、話を拒む理由は無かった。

数週間後、揃いの紺の特攻服に身を包み、クルマ3台に分乗して夜を徹してやってきた十数名を環八千歳台で迎える数百台。

「神風連合」 この名前が関東の族にとって関西の代名詞となったのである。

実は、Emperor にとっての CRS と同様に、当時は日韓連合というのが関西では最大規模であり、彼等はそこと敵対していたようである。つまりそれぞれのテリトリにおいて数の上では業界2位だった同士が提携することでトップに躍り出るという意味もあったのですな。

やがてはこの生野の男達を中心とした神風が勢力を伸ばし、西日本狂走連盟という大同団結となる、らしいのだが、それはまだ先の話であった。

続く
[PR]
by HarryBlog | 2007-01-27 16:20 | Teenage | ↑Top  
【16】黒い人々
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃
【13】出頭 【14】釈放 【15】ディスコ

既に廃校となってしまったのだが、世田谷・新宿・渋谷・目黒という第二学区、都立の全日制普通科高校では最低ランクの学群だった我が母校は小田急線梅ヶ丘駅が最寄りであった。学校自体は変哲も無いボロ高校であるが、この梅ヶ丘ってのが問題なのだ。

あの悪名高き(当時)國○舘と一緒なんである。今では共学となり、制服もブレザーとなったらしく、往時の影はほとんど見られないようであるが、校名からして分かる通り元々右翼の流れを汲んだ、国の為に死ぬる青少年を育成する私塾だった訳で、思想教育と共に体育会系と言うよりも軍隊並みの規律と上下関係により、死ぬまで闘い続ける不屈の精神と肉体を創り上げようというのである。頭で考えるより先に身体が動く、武道などのスポーツ選手とともに不良少年にとっても理想的な環境だったのであろう。中学時代から「どこどこの何某」と呼ばれるようなエリート?達が競ってその門を叩いて集まっていた。

腕に自信あり、反骨の気概を持つ一匹狼的な男が多いが、士舘に於ける先輩は絶対的存在であり、総武線とか東上線とか通学経路を同じくする者でヤクザ組織を模したXX一家と称していたらしい。

当時の士舘の制服は旧海軍式のホック留め詰襟で真っ黒、縁と袖章に蛇腹のモールが特徴である。経堂の並木製の中ランに寸胴。髪型は上級生になるとパンチやニグロパーマも居たが、基本はアイパーで固めたサイドバックである。何故か晴れた日でも長靴にビニール傘を持つ奴も多い。

で、電車の乗降時などはホームにずらっとこの威嚇するナリの1年坊主が並び、先輩の姿が見えなくなるまで大声で「押忍!押忍!押忍!」と唱和し続けるのである。

まぁ、小田急沿線では傍若無人なサンペンの姿を見ることが皆無なのは間違いなく彼等の存在のお陰ではあるのだけどね。とにかく凄かったからな、士舘 vs 朝高のバトルは。山手線を止めちゃったりして連日新聞を賑わせていた。

なんにしろ、他の健全な高校生にとっては、この黒い集団を見掛けるだけで胃が痛くなる。軍歌を大音量で流す右翼の街宣車に出会った時の気分を想像して貰えば分かるだろう。これが毎日ずっとなのだ。たまらんぜよ。
耐え難きを耐え 忍び難きを忍び
押さば引け 引かば押せ
是即ち自己滅却の精神也
我が道に いかに険しき山あれど
踏みてぞ越えん押忍の精神
そいつは結構なことだし、思想信条はご自由にどうぞでいいんだが、できればどっか余所でやって貰えませんかねぇ?

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-09-04 07:50 | Teenage | ↑Top  
【15】ディスコ
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃
【13】出頭 【14】釈放

いずれ海外追放されることになるなんて夢にも思わぬ Bob 少年、釈放されりゃこっちのもんだ、と反省の素振りも見せず、相変わらず単車とディスコに明け暮れていた。

世は第一次ディスコブームであった。60 年代末期、ベトナム派兵で横田に駐留していた黒人達が新宿に出てきて流行らせたゴーゴーを、奴等と同じノリでは踊れない日本人が独自の振り付けを考案したのが始まりらしい。

もっとも、高校生が堂々と入っていい場所ではないし、不純異性交遊、酒やタバコも付き物、さらに過激なモノさえ流通する所だから、ブームとは言っても誰でもが行っていた訳ではないだろうが、これもまた、はち切れるエネルギーを発散する場の一つであった。

もうちょっと上の世代だと赤坂ムゲン、下だと六本木メビウスやクレージーホース、えっと…マハラジャはもっと後か。ジュリアナなんて全く知らん。ワシらの頃は、ってかロケーション的、人種的にそうだったんだろうけど、やっぱり新宿だった。ゲット、ポップ、トレビ、ソウルトレイン、カンタベリーハウス等無数のディスコが乱立していた。

中学の時に歌舞伎町裏の ACB(アシベと読む)に連れていかれた時は、生バンドをバックに、2階席まであるいかにもダンスホールって感じで、あそこで踊るのは勇気が要ると思ったもんだが、ゲットのような狭くて暗い空間に向かい合わせに並んだらこりゃもう踊るしかねぇよな。

また、ディスコとは別に、パブやスナックを借り切ったパーティーってのが毎週のようにどこかで開かれ、不良達の社交場となっていた。そこで恥を掻かないようにディスコに通って踊りを覚えるのである。平日放課後だと1ドリンク付きで 500 円とか高校生の小遣いで入れたし。

同じチャチャとかソウルシーシーとか言っても店毎に微妙に違っていて、パーティだと派閥争いしちゃったりして可笑しいねぇ。皆で同じ振りを合わせるのも楽器の合奏に似て楽しいのだろうが、お手手~繋いで~ってなんか幼稚園のお遊戯を想い出してちょっと気恥ずかしい。

そういうのは大の得意、と言うか、ナンパに有効ならば何でもマメにこなすのがこいつだ。あの八の字眉毛にアフロっつうかニグロっぽいパーマってぇのがなんとなく黒人っぽくて上手に見えたってのもあるかも。でも最近は、遅れてデビューしてきた DEBU の方がKENTO'S 常連の年長組になってるようだけどな。

ワシも中学の仲間と結構あっちこっちに顔は出してみていたが、新宿を地元としているあいつらには敵わない。それにステップを覚えるよりも、内面のうねりから勝手に身体が動き出すような自由な踊りの方が好きなのだ。

いずれにしても、踊りってのはいいもんだ。デビューの時期や通ったハコ、踊り方は色々だろうが、それぞれの青春を彩っていたのであった。

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-08-21 00:15 | Teenage | ↑Top  
【14】釈放
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃
【13】出頭

「お前さぁ、こんなんで自分だけ鑑別所行くのバカらしいだろ?」

そりゃそうだ。ナンバーから割られて事件への関与は否定できそうにないが、実害を与えていない自分だけが貧乏くじを引くこたぁねぇよな。

「だからさ、一緒に居た奴等の名前、白状っちまいないよ」

「いや、集会で初めて会ったんで全く知らないんですよ」

朝からずっとこれの繰り返しである。同じことばかり何回も訊かれ、なんとか納得して貰おうと言い方を変えると、微妙にボロが透けてくる。半日も締め上げれば音を上げるだろう。

このまま帰れないんじゃないか、もう面倒臭いから相手が望む通りに答えちゃおうか。友達への信義なんぞとっくに消え失せており、「これでも食え」と、お約束のカツ丼なんか出された時にゃ涙まで出てきてしまった。

長靴履いた土方風の主犯は実は水道屋です。と喉元まで出かかる度にそれを押し留めたのは、一緒に喧嘩したときの奴の鬼形相、血へどを吐きながらなお地面に頭を叩きつけられる喧嘩相手の白目を想い出させられるからであった。警察なら嘘ついても殺されるこたぁねぇだろう、と。

警察の方も、悪名高い Black Emperor を潰す材料になるかと期待したら、傍流の雑魚数名だけしか関与してないらしくてどうでもいいやといい加減になってきていた。一応お仕事だから調書取って送致するが、物損だけだし、あとは裁判所に任せりゃいいか、ってな感じ。

って訳で形ばかりの調書に署名して放免され、後日の家裁からの呼び出しを首を洗って待つ身となった Bob 少年、まさかこの程度の罪で海外追放処分を喰らうことになるとは…

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-08-17 21:44 | Teenage | ↑Top  
【13】出頭
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス  【12】襲撃

「こちら成城警察ですが、xx 月 xx 日の夜の件で話を聞きたいので署まで来て下さい」

本来なら出頭要請書のような文書が郵送されてくるのが筋の筈だが、日付を聞いて動転してしまい、思わず「わかりました」と返事してしまった。

なんでバレたんだ? どこまで知ってるんだろう?

中坊の頃に補導されて交番へ連れていかれたり、交通違反でパトカーに乗せられた経験はあったが、警察署から電話なんて初めてだった。

向こうが証拠を出すまで黙っていよう。主犯はあいつだけど、チクったら殺されるからな。保護観察中のあいつもバレたら終わりだ。一人でバイクで走ってたら暴走族に巻き込まれたことにでもするか?

成城署ってのも解せない。あの件ならば世田谷署か目黒署の管轄だろ? もしかしたら、あのまま集会で走りに行った奴等が別の事件を起こしたのかもしれないな。Cat's とカチコミ中なんだし。 するってぇと、ただの参考人か。

悶々としながら署に入るとすぐに2階に連れていかれた。途中で顔だけ知ってる奴とすれ違う。確かあいつは多摩の奴だ。あいつも呼ばれたってことはやっぱり別の事件があったんだな。ふぅ、すぐ帰れそうじゃんか。

普通の役所のようなフロア、いかつい制服姿ばかりが忙しそうに行き交うというのが全く普通ではないのだが、その奥に間仕切りされた小部屋が並ぶ。もっと隔離された別空間を想像していたが、日常と繋がっていることにちょっと安堵する。

しかし、それも小部屋の中へ入るまでだった。向かい合わせの事務机にパイプ椅子の他は何も無い、殺風景を絵に描いたような狭い部屋。さすがに自白を迫る傘付き白熱灯は無いが、まぁドラマで見る取調室である。

「そこに立って!」 入るなり命令口調で壁を指され、カメラを抱えた署員が慌ただしくフラッシュを焚いて撮っていく。

指名手配の写真が人相悪い物ばかりなのも納得できる。犯罪者でなくとも、いきなり訳も分からないまま、こんな扱いを受けりゃ憮然とした顔になるのも当然である。

「なんだよ、これじゃ丸っきり犯人扱いじゃねぇかよ。もう協力してやらんぞ」

協力も何も、既に電話番号まで調べが付いているのに、徒に警察の手口に乗せられちゃっただけである。最初に有罪確定逃れよう無しと宣告し、情状酌量を餌に仲間の情報を白状させようという魂胆なんである。

裁くのは警察じゃない筈だが、調書をどう書くかは担当刑事の胸三寸なのだから、高校生の浅知恵じゃ初めっから勝ち目など無いのだ。

「お前がやったんだな?」

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-08-08 22:14 | Teenage | ↑Top  
【12】襲撃
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス

「ゴルァ! 降りてこい!」

タクシーを取り囲んだ数台のバイクから降りながら怒声を発する少年達。7~8人は居る。観念したタクシーの運転手は窓を閉めドアのロックを確認する。

ガチャガチャと引いてもビクともしないドアに怒った一人が窓ガラス越しの運転手の顔へ目がけて思いっ切りパンチをくれる。本気でガラスを割ってやるつもりだったが、痛んだのは拳の方であった。

悔し紛れにピラーのアンテナをへし折ってやろうと力任せに引っ張る。ところが、予想外に強いアンテナは折れずに弓のようにしなり、滑った手から離れると反動で傍らに居た別の少年の頬をしたたかに打つ。しかも往復。

そいつは確かに常に笑いを取ることに命を懸け、地元ではマンガと呼ばれたりしていたのだが、何もこんな時にアンテナに往復ビンタ喰らうなんて… 気勢が削がれちまうぢゃねぇかよ。

という弛みそうな雰囲気が一変した。突然 ドン! という大きな音に驚いた皆が振り向くと、なんとゴム長靴を履いた土方のような男がボンネットに飛び乗り、恐ろしい形相で運転席に向かって「てめぇ、ぶっ壊してやるからな」と叫びながら、本当にボンネットから屋根を飛び跳ねてボコボコに凹ませている。

これを見て全員が切れちゃったのですな。後はもう手当たり次第に蹴りやパンチを繰り出す。例の土方ほどのダメージは誰も与えられていないが、少年なりに、壊れない程度に物に当たって気を晴らせればいいや、という智恵を働かせていたのかもしれない。

ファンファンファン… テレビでお馴染み、当時の警視庁のサイレンが近付いてくる。そう言えば、すぐ近くには恐怖の三交機の基地もあるのだった。誰かが通報したのだろうか、お約束通り終わった頃にやってくるのな。

蜘蛛の子を散らすように逃げる少年達。 速い速い! そりゃまぁそうだろう。交通違反とは訳が違う。器物損壊だけでも立派な犯罪だからな。こんな迷惑な奴等は引っ捕らえて八つ裂きにしてしまえ! とワシなら思う。

山手通りで三方に散ると、道玄坂方面へ直進する TX750 がロックオンされた。

深夜とは言え土曜の夜の渋谷である。一般車の間を縫うように逃げるバイク。そのまま繁華街へ進んだ方がパトカーも身動き取れなくなると客観的には思うが、当の少年はスピードを出せないと追いつかれてしまうという強迫観念に支配されていたのだろう、246 を三茶方面へ U ターンしたのだった。

トンネルを抜け、大橋の下り坂を降りきった頃にバックミラーが赤く染まる。三茶も混んでいるだろうから三宿でまた U ターンし、渋谷へ戻る。170km でトンネルへ入るが、複合コーナーでは 120km ぐらいに落とさざるを得ない。サイレンは遠いがまだ聞こえる。

「しつこい奴だ」 再び U ターン。回を追う毎に習熟したのかラップタイムが上がっていき、僅かずつながらパトカーとの距離が開く。5~6周繰り返しただろうか、池尻を超えても赤色灯が見えなくなり、ようやく家へ帰ることができた。

ところが、後ろに乗った奴が必死で隠したつもりのナンバープレートは実はしっかりと確認されていたのであった。

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-07-31 00:43 | Teenage | ↑Top  
【11】チェイス
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会

高井戸から都内へ向かうと、今度は調布方面から来た本線と合流し4車線になる。バイクなら1車線に3台、と言うより車線など関係無く蛇行しながら道一杯に広がって走る数百台。圧巻である。

音も凄い。集合の直管は1台でも喧しいのに、それが夥しい数重なるとまるで地の底からの叫びのように、その場の空気全体を振るわせる。それが数キロに渡って続くのである。

下高井戸で井の頭通りへ抜ける車線、首都高へ乗る車線が別れ、再び2車線の立体交差へ入り、4車線分に広がっていた台数の密度が急に高くなる。

間に挟まれた一般車も一緒に流れに乗るしか無い。「な、なんなんだこれは~?」訳が分からないまま、逃げ場の無い立体交差へ吸い込まれ、車線間、そして壁との間を次々に擦り抜けていくバイクの爆音に取り囲まれる。

左車線を走っていたタクシーの右側を一際大きな音が響いた。ビクっと思わずハンドルを避けてしまう。あ、左側からもバイクが来ていたのを忘れていた。

「まずい!」と思う間も無く、ガン! ガガッ! …接触してしまったようだ。と言ってこの状況で止まる訳にはいかない。バックミラーを覗くと、一瞬乱れて小さくなっていった隊列が、怒ったように迫ってくる。

丁度大原交差点に差し掛かっていて、奴等は新宿方面へ向かう坂を下っていく。助かった!
と思ってタクシーは環七へ抜ける。しかし、後続の数台は本隊を離れてこっちを追ってくるではないか。「おい、お前ら違うだろ!」

心臓に冷や汗をかきながらも、「俺だって運転でメシを食ってるんだ」というプライドがもたげてきたのか、タクシーは後輪をドリフトさせながら右折し、大森方面へ全速で逃げ出した。

昼間じゃ全く動かない環七だけど、この時間なら逃げ切れる。と思ったが、バイクとでは勝負になりっこない。あっという間に追いつかれ、慌てて梅ヶ丘通りを淡島方面へ曲がる。ここも空いていたので 100km 近いスピードで逃げる。道が狭い分、いくらバイクでも簡単には追い越せない。 と言って、どこへ逃げれば助かるんだぁ?

渋谷が近付くにつれ、さすがに車が増えて飛ばせない。遂に駒場辺りで追いつかれ、前を塞がれてしまった。

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-07-30 21:26 | Teenage | ↑Top  
【10】集会
【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達

甲州街道を新宿から下ると、大原から明大前・下高井戸まで立体交差が続き、桜上水駅前通りが出てきたところの信号から先で、上を走る首都高4号線が中央高速方面へ曲がっていくのに合わせて環八高井戸方面へ分岐する。

この立体交差は、バイクで全開で上っていくとそのまま夜空へ飛び立つ発射台となる。首都高と並行なのでそれほどきつい R ではないけど、加速しながら身体を傾けていくと、強烈に後ろと外へ引っ張られ、いやもうこのまま飛んでしまった方が幸せかもしれない、と思ってしまう。

しかし、脇に仲間が走っていたら話は別である。意地でもスロットルは戻さず、G に負けないように足を踏ん張り、地面に顔が付くんじゃないかと思うほど身体を内側へ投げ出す。

視界に相手が入らなければ抜かれてはいない。その代わり、頂点を超えるとすぐに高速道路の柱が目に入り、猛烈な勢いで迫ってくる。しかも下りで今度は左コーナーである。壁を擦るほど膨らんだところで切り返し、そのまま壁を横向きに走っている感覚で頭を内側へ向けるが、見えるのは地面と壁だけの異次元トンネル。

それがフッと途切れ、再び高速道路と街並みを認識できたらジェットコースターは終わりである。高井戸出口の脇を抜けて、環八の信号を U ターンすると、今走り終えたバイクがズラっと並んでいる。何十台じゃきかない、いやずっと先まで途切れてないから数百だろう。

空いているところを探すのも一苦労だが、だいたい停める位置は決まってくる。エンジンを切り、タバコの煙を大きく吸い込む。ふぅ、なんとか飛ばずに辿り着けたな。

煤けた顔に涙の筋が走っている仲間と談笑している間にも続々と到着する。毎週土曜の夜、まずはここに集まり、ここから都内、あるいは三多摩か横浜・湘南等を目指すのである。

映画にまでなったことで、Black Emperor の名は一般にも知られるところとなり、それはつまり警察からも目の敵にされるということである。あちこちに網を張って小さなグループを狙うのは効率悪いし、有名チームを叩いた方がちゃんと取り締まっているという宣伝効果も高い。

もっとも、道交法改正まではただ集団で走っているだけでは取り締まりの対象ではなく、もちろんスピード違反や信号無視等はしているのだが、あれだけの台数の中で個別に捕まえたところであまり意味無いし、よっぽど悪質な犯罪でもしない限り、ガキの遊びと見逃していたように思う。むしろ交通機動隊などは自分達の方こそが走りのプロなんだぜぇ、なんて追い詰めるのを楽しんでいたようにさえ見える。

これに対してマッポ上等などと調子に乗っちゃうんだからやっぱバカだよねぇ。深夜の大井埠頭で乱闘するぐらいなら共食いみたいなもんだが、一般人に手を出しちゃぁいけません。

続く
[PR]
by HarryBlog | 2006-07-29 22:02 | Teenage | ↑Top  
ページの先頭



針生 徹

Writer's choice
Harry corporation
Study room
Twitter
Facebook
Tumblr


エントリ内容に無関係と判断したコメント、トラックバックは削除します
記事ランキング
最新の記事
開会式
at 2015-01-31 17:53
針生一郎と戦後美術 - 宮城..
at 2015-01-18 17:22
回顧
at 2014-12-27 22:36
プライスレス
at 2014-01-03 07:31
謹賀新年
at 2014-01-02 09:20
蹴球興業
at 2013-09-21 22:27
スマートですかねぇ?
at 2013-08-07 21:42
遭難記録
at 2013-08-04 20:50
リバイバル
at 2013-08-04 11:06
出稼ぎ
at 2013-08-04 10:56
最新のトラックバック
RSS入門生(1):By..
from Rosslyn Papers
Flipboard
from Rosslyn Papers
忘年会
from nest nest
とりあえず
from nest nest
update
from nest nest
水筒
from nest nest
針生一郎さんが亡くなった。
from 今日、考えたこと
針生一郎さん
from 今日、考えたこと
針生一郎氏逝去
from にぶろぐ
針生一郎さん
from 今日、考えたこと
カテゴリ
以前の記事
人気ジャンル
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31