奥さんの自転車を借りて愛娘と二人乗り。重くなったもんだ。
「ちゃんと空気入れておけってお母さんに言っときなよ」
「お父さんが言えばいいでしょ、結婚してるんだからぁ」
「おめぇが食いしんぼだからデブになったんだろ」
「こんなお腹のブタくんに言われたかないよ~だ」
「あ、朝顔だ! 止まりなさい!」
世の女性がワガママになってしまうのは父親の所為なんだろうな。
こんな楽しい会話も束の間。今日は保育所の夏まつりへ来たのだ。
ほんの4ヶ月ぶりの同窓生と会うと、もう父親の出番なんて無い。
「キャ~ッ! ××ちゃん、久しぶりぃっ!」
「懐かしいっ! 保育所時代の方が楽しかったよねぇ」
皆さんよっぽど勉強で苦労しているのだろうか? まだ数ヶ月だし、小学一年生の一学期なんて遊んでるようなもんじゃねぇのかい?
忠犬アッシー君はイベントが終わるまでお座りしてひたすら待つ。
「ご褒美にこれあげよっか? お母さんに見つかるとヤバイけど」
同窓生に便箋やらキラキラシールやらを貰ったらしい。子供だけで物のやり取りをしちゃいかん、と言われてたのを父親を共犯にして逃れようという魂胆のようだ。
「ほらぁ、これなんか可愛いよ、どう?」
どうせ買収するのなら、相手が喜ぶような物にしろよな。
ま、そんなもん貰わなくたって、秘密は守ってやるよ、ご主人様。