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ITコーディネータ 針生徹 の blog
④ São Luis
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格安の船はバックパッカーの味方ではあったが、日本とは桁違いの広さの国土を持つブラジルでは都市間の移動は飛行機を使うのが普通であり、便数も多いからいきなり空港へ行ってもキャンセル待ちすれば乗れるのだね。

わずか2時間の飛行でベレンへ戻ってこられ、お世話になった人の親戚の家のドアを叩く。別人のようになったワシの顔に驚き、日伯協会が運営する病院に日本語の分かる二世の医師が居るというので連れていって貰う。

「うぁ~随分腫れてますねぇ」 いやそんなこたぁ分かっている。この痒さと息苦しさをなんとかしてくれぇ~ 「呼吸困難の危険があるので、このまま入院して下さい」 え?

すぐに点滴。身動きできず、白い天井を眺めるだけ。冷房の効いた静かな個室。ここは本当にブラジルか? 瓶が空になるとまた取り替えられてずーっと点滴だけ。元気になってきた証拠なんだろうが、腹減ったなぁ。

結局ほとんど治療らしき事は何もせず、翌朝には腫れも呼吸も元に戻っていたから退院。これだけでマナウスの宿代の 10 倍以上掛かった。飛行機代と合わせて予定外の出費が痛いが、健康には変えられないね。

何日ぶりだろうか、まともなメシをたらふく喰らうと一気に復活。 ワシゃルフィか?

お世話になった人々に別れを告げ、今度はバスでノルデスチ(東北地方)へ向かう。たかだか 500km ほど、十数時間の旅なんて近いもんだと思えるようになった。道路は悪いが、なにしろエアコンが効いててリクライニングできるシートってのがワシには贅沢。

だけど、景色はまたもひたすらジャングルだった。
④ São Luis_a0008364_18594186.gif
リアス式海岸沿いを通るのなら楽しめただろうが、それじゃ距離が数倍になってしまう。目的地のサンルイスもまた巨大な河口の中州なので、画像右下端の川が細くなったところへ向かって内陸部を走るのだった。

さて、ブラジルで唯一フランス人が作った街、当時の王ルイ 13 世の名を付けたサン・ルイス。確かに他の街と雰囲気が異なり、ヨーロッパの匂いがする。それなりに大きく人も多いが、街全体が公園の中にあるようで、サンパウロはもちろんベレンやマナウスの雑多な喧噪と比べると別の国に来たようである。

マナウスと値段はさほど変わらず快適さは雲泥の差の小綺麗な宿を確保したワシは、もう体調は問題無かったが、急ぐ旅でもなし、落ち着いたこの街でしばらくのんびりすることにした。

砂糖と綿花の輸出港として栄えた往時を偲ばせる豪奢な邸宅が並ぶ旧市街を散歩しても楽しいし、丘の上の公園から碧い海を眺めるのもいい。アマゾン河も大きさだけは海みたいなもんだったけど、あの泥色ではなく、エメラルドグリーンを濃くした本物の海。日本まで繋がってるんだぜぃ。

次の街へのバスを予約しておこうとセントロから離れたターミナルまで行こうと思ったのだが、どの市内バスに乗ればいいのか分からず、適当に乗ってみると綺麗なビーチに着いたり、寸分違わぬ家が数百軒並ぶ新興住宅地とか、山沿いのファベーラで降ろされたり、と思わぬ市内観光になる。

だいたい庶民の足である市内バスってのは乗ってるだけでも面白い。カセットをがんがん鳴らし、煙草を吸いながら大声で乗客とお喋りしている運転手。停留所では子供が車内販売するアイスクリームを買ってみんな手をベトベトにしながら食べる。パンクして降ろされたこともあったし、バス停でもない所で運転手だけ降りて店先の親爺と談笑したり。ぉぃ、飲んでいるのはガラナだよな、ビールにも見えるけど。

こうして数日間のトライアンドエラーの末になんとかフォルタレーザ行きのバスチケットを取得して街へ戻る。セントロの店も屋台も日曜になるとみんな閉まるのだね。人が少ないといよいよ公園みたいだ。

広場でボケっと座っていると、この街に来て初めて見掛けた東洋系の顔と目が合ったので思わず「こんにちは」と日本語で挨拶する。「ここに来る日本人なんて滅多にいないよ」と驚きながら寄ってきた二世の男と少し話をする。彼は医者だそうだ。「言葉を覚えブラジルを知る為に旅をしている」と言うと、「それならやっぱり地元の女の子と仲良くなるのが一番だよ」と隣家の娘を紹介してくれた。

彼女の家でお母さん、弟の婚約者を交えてご馳走になり、ぎこちないながら少しずつ会話できるようになるとやっぱり楽しいもんだねぇ。

でも、明日にはもうこの街を去るのだよ。残念!
by HarryBlog | 2007-06-30 19:03 | Travels | ↑Top  
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針生 徹

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