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ITコーディネータ 針生徹 の blog
③ Manaus
目次

5日間、無限に続く泥色の河とジャングルだけを朝から晩まで見せられていたので、突然現れた大都市には驚いた。ゴムで栄えた頃の遺物だけでなく、自由貿易港として多国籍企業の工場やビルも並んでいる。

貧乏旅行の先は長いのだからできるだけ節約しなきゃならないのであるが、河舟で死んでしまったので、今回だけは少々高くてもまともなホテルで寝たかった。

ところが、やはり観光地でもあるマナウス。セントロに並ぶホテルで予約も無しに取れる所など無かった。仕方なく街外れへ歩いていき、ようやく見つけた宿はフロントのベルを押しても親爺がなかなか出てこない。1泊 500 円相応の粗末な造りであったが、平らなベッドとちゃんと流れる洋式トイレを確保できただけでも幸せだ。

と思ったのも昼までだった。屋上というかバルコニーみたいなところにベニア板で囲っただけのような部屋は強烈な日差しに熱せられて蒸し風呂のようになってくる。窓も無く、もちろんエアコンなどというものも無い。共同のシャワーは水しか出ないが、それが一番快適だと思わせる為にわざとああいう部屋にしてるんじゃないだろうか。

ということで日中は外へ出るしかない。しかし、すぐに便意をもよおすので遠くへはいけない。近所の公園で木陰を求めるのだが、特等席のベンチでは身体中からピンガの臭いを発散したオッサン達がドミノに興じている。昼間っから仕事もしないで何遊んでるんだよ~、と言いたかったが、実はそれが彼等の仕事だったのかもしれないな。

宿は食事付きで、奥さんが料理して親爺が運んでくる。料理と言っても船でさんざん見飽きた、塩漬けの肉とパサパサご飯にフェイジョンとファリーニャという定食である。元気な時ならそれなりに旨いと思うが、この体調ではちょっと食べられない。

再び外へ出て、屋台でオレンジを食う。うんめぇ~ 少し元気が出てきたのでセントロまで歩く。エアコンの効いた大きなホテルのロビーに潜り込み、人を待っている風を装って陽が沈むまでボケ~っと過ごす。

自分の宿に戻り、夕食も食べたくないと言うと、親爺が「これは効くぜ」とくれた薬を飲んで早めに床に就く。が、やはり窓が無いと昼間熱せられた空気は逃げていかないなぁ。いや、外も暑いんだが。

こうなると吹きさらしで風が心地良い船の甲板が懐かしく思えるほどだ。それでも水シャワーで身体を冷やして久しぶりの動かないベッドに横たわるといつしか泥のように眠っていた。

確かに現地の薬は効いた。効き過ぎて蕁麻疹が出てきたんだが、下痢は嘘のように納まり、翌朝は3日ぶりに固形物(パンだけだが)を食べられた。

元気になったので部屋が釜になる前に港の市場へ行ってみる。凄い賑わいだ。治ったとは言ってもさすがにアマゾン名物のピラーニャ、パクー、ピラルクーはまだ無理だろうな。ってことで、とりあえず観光船に乗って、お約束のここ↓だけは見てきた。
泥色のソリモンエス川とコーラ色のネグロ川の合流地点であるが、混じり合わないまま数十キロ流れていくのだ。これは確かに見物であった。

さて、他にもピラニア釣りとか博物館、アマゾナス劇場などの観光コースがあったのだが、この頃からまた体調がおかしくなってきた。蕁麻疹が酷くなり、息苦しい。意識ははっきりしているが、時々ふっと気が遠くなりそうになる。

宿へ戻って鏡を見ると仰天した。顔が2倍ぐらいに膨らんでいる。お岩さんのような瞼は持ち上げるのも重い。ってか、目一杯開けてるつもりなのに薄目にしかならない。ヒューヒューゼーゼー、気管支だけでなく、内臓の壁にも虫が涌いてきたようで胸を掻きむしるが届かない。

親爺に「何なんだよ、あの薬は?」と文句を言うが、「腹は治っただろ。ジャパネーゼには合わなかったのかねぇ。じゃ別の薬やるよ」だと。冗談じゃねぇや、これ以上壊されてたまるかぃ!

こうなったら医者の手に委ねるしか無いな。しかし、ワシのポルトガル語には独りで病院などというシチュエーションは想定もされていなかったし、初めての土地でどこの病院がいいのか、この親爺に訊けってかぁ? う~ん…

ベレンまで引き返せば会った日本人が居るからなんとかなるかと、眠れない夜が明けるのをひたすら待ち、朝一番の飛行機に乗ることにしたのであった。
by HarryBlog | 2007-06-30 02:24 | Travels | ↑Top  
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針生 徹

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