【1】ここから 【2】始まり 【3】ファーストコンタクト 【4】吹き溜まり 【5】社交場 【6】脇道
【7】下北沢 【8】キーマン 【9】土曜の夜の天使達 【10】集会 【11】チェイス 【12】襲撃
【13】出頭
「お前さぁ、こんなんで自分だけ鑑別所行くのバカらしいだろ?」
そりゃそうだ。ナンバーから割られて事件への関与は否定できそうにないが、実害を与えていない自分だけが貧乏くじを引くこたぁねぇよな。
「だからさ、一緒に居た奴等の名前、白状っちまいないよ」
「いや、集会で初めて会ったんで全く知らないんですよ」
朝からずっとこれの繰り返しである。同じことばかり何回も訊かれ、なんとか納得して貰おうと言い方を変えると、微妙にボロが透けてくる。半日も締め上げれば音を上げるだろう。
このまま帰れないんじゃないか、もう面倒臭いから相手が望む通りに答えちゃおうか。友達への信義なんぞとっくに消え失せており、「これでも食え」と、お約束のカツ丼なんか出された時にゃ涙まで出てきてしまった。
長靴履いた土方風の主犯は実は水道屋です。と喉元まで出かかる度にそれを押し留めたのは、一緒に喧嘩したときの奴の鬼形相、血へどを吐きながらなお地面に頭を叩きつけられる喧嘩相手の白目を想い出させられるからであった。警察なら嘘ついても殺されるこたぁねぇだろう、と。
警察の方も、悪名高い Black Emperor を潰す材料になるかと期待したら、傍流の雑魚数名だけしか関与してないらしくてどうでもいいやといい加減になってきていた。一応お仕事だから調書取って送致するが、物損だけだし、あとは裁判所に任せりゃいいか、ってな感じ。
って訳で形ばかりの調書に署名して放免され、後日の家裁からの呼び出しを首を洗って待つ身となった
Bob 少年、まさかこの程度の罪で海外追放処分を喰らうことになるとは…
(
続く)