最初は近親者だけで慎ましくと考えていたが、先々のことも考えると一般的な仏式葬儀をやるのが結局面倒が少ないようだ。近所の斎場は毎年恒例の大きなイベントがあるらしく満杯、仕方なくちょっと辺鄙なお寺を借りる。
親父 「あぁ、そう言えばその辺の墓地を買っていたんだ」
葬儀屋「それは丁度いいですね。ではこれで話を進めます」
その駅ならば同じ所だろうと思い込み、なんだかんだと手配する。これでゆっくり眠れるね、などと話しているところへ電話が入る。
葬儀屋「ここの墓地には針生様の名前の区画は無いそうです」
なんだと? いや、別に無宗教だからどこでもいいんだが、異なる宗派で法名を貰うと受け付けない墓地もあるらしい。
姉 「本当にこの辺なの?」
父親 「いや、確かその沿線だったと思うんだが…」
入院した時、家中の重要書類は整理したつもりだったが、そんなの見たことも無いぞ。
古い通帳も全部見てそれらしいのを探すが見つからない。地図とインターネットでしらみつぶしに探して電話で問い合わせるが全滅。
葬儀の手配だけでも大変なのに、他にも銀行や生命保険などあっちこっちの対応をしなきゃならないんだぜぇ。
姉 「昨日母が亡くなりまして、生命保険の手続きを」
姪 「あっ、これ。墓園だって!」
僅かな望みをかけて手紙の山をひっくり返していた姪が叫ぶ。
保険屋「それはご愁傷様でございます」
全員 「やった! 大当たりだ! 万歳!」
ふぅ、なんにしても見つかって良かったよ。お手柄>姪