さて、週末バージョンは回顧シリーズの続き。
前回まで:
四代目
初めての土地で、商売なんぞと無縁に育った若造がいきなり経営者。味噌・醤油なんて何から作るのかすら知らなかった。
地震で工場は倒壊してしまったので、原料処理は同業者組合へ委託し、倉庫を改造して熟成と調整の工程だけになっていた。
従業員は自分の親より年上だ。「昔からこうやってきた」というばかりで、素人の舌でも出来上がりにバラツキがあるのが分かる。設備も不充分だから、桶からの出し入れも、樽や袋への包装も全て人力である。
一つの桶に 4t の味噌を寝かせる。上と下では温度が異なるので、月に1度ぐらい入れ替える。ワシゃ元々体育系だから肉体労働は苦ではないが、桶の中は酸欠になりそう。汗がしたたり落ちるが、それもウチの味となるのだ。
まぁ、作る方は、同業者組合や食品研究所等へ勉強しに行って次第に覚えられた。そう言えば、「みそ製造技能士」という資格も取ったんだっけ。
問題は売る方と、経理や人事という経営者としての仕事だった。なにしろ振りだした手形の金額も期日も知っている人間が居なくなったのだ。
まずは、安定した売上が立たなければ話にならない。しかし、価格競争に勝てる規模ではない。今のやり方では品質の維持すら難しい。
ビジネスモデルそのものを変えなければならないのではないか?