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ITコーディネータ 針生徹 の blog
アクロポリス
タッちゃん

さて、最初のうちはストのせいで会えなかったエジプト帰りの友人の身を案じていたワシだったが、ゴルフにタッちゃんと遊びまくるうちにどうでも良くなってきた。

アクロポリスという、いかにもギリシャらしい観光名所が市内を一望できる高台にある。あの白亜の大きな柱が何本も青空へ向かって突き抜けるように立っているパルテノン神殿の遺跡である。

せっかく観光の国へ来たのだから、三人だけでも見に行ってみよう、という事になった。雲助タクシーに途中で降ろされ、後は徒歩で登る。二日酔いというか、ずっと酔いの心臓にはちと苦しい。

ようやく神殿が目に入ってきたところで、段々と道が細くなり、息を切らした観光客が渋滞して、ついには行列になって止まった。アメリカ人らしいおばさんの怒鳴り声が聞こえる。「なんでお金払わなきゃいけないの?」

やはりギリシャだった。ここまで苦労して登ってきた人間が、頂上を目の前にして帰る筈が無い、という所で拝観料を取る仕組みになっていたのだ。あのナイトクラブのシャンパン精神は神話の時代から脈々と引き継がれたギリシャ人の英知の結晶だった訳だな。

おまけに神殿はほとんど崩れかけた廃墟で、ありゃ遠くから眺める物だと思い知らされただけだった。すごすごと降りる三人は、ぼったくられたクラブから帰るときと同じ気分だった。

実はその頃、当の板前は既にアテネ入りしていた。JAL という優良航空会社のチケットだった為、優先的に振り返られたようだ。前日一人でこのアクロポリスへ登って街を眺めながら、「こん中のどっかに居るんだろうけどなぁ」と溜め息をついていたらしい。

リビアほどではないだろうが、厳格なイスラム教のエジプトで抑圧されていた板前は、日本への帰途にバンコックに寄って酒池肉林の予定だったから、アテネにはあと二泊しか居ない。

「もうバンコック行きのチケットは予約したのかなぁ?」ワシが何気なく呟いたとき、「それだ!」突然アラブ人の頭に電球が灯った。

意味を理解できずに唖然とするワシ達を無視して、電話に飛びついて日本語でがなりたてる。「エジプト帰りの板前を探してるんですけど…」

ようやく呑み込めてきた。予定通りにしろ、変更するにせよ、Re-confirm をしている筈の JAL へ問い合わせていたのだ。

「日本語通じちゃったよ。さすが JAL だぜぃ」興奮したアラブ人は受話器も抑えずにワシ達に報告する。「あぁ、そのお方なら昨日アテネ入りされておりまして、オリンピアホテルに滞在されています。電話番号は…」

ギリシャの神々は我々を見捨てなかったのである。
by harryblog | 2004-04-16 21:06 | Travels | ↑Top  
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針生 徹

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