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ITコーディネータ 針生徹 の blog
神話の世界
パキスタン航空

という訳で、丸1日以上掛かってようやくアテネへ着いた。

「何故誰も迎えに来とらんのだ!」と怒っても仕方がない。早朝だったし、アラブ人がアテにならないパキの出迎えに待っている筈もなかった。

どうせ商売女が屯しているっていうホテルにシケ込んだに違いない。寝起きを襲って説教してやらなくちゃならんな。

ギリシャは観光で成り立っている国である。タクシーからナイトクラブまで、鵜の目鷹の目でおのぼりさんのケツの毛をむしり取ろうと狙っている。

実はアラブから来た友人達もこのシステムに填められてしまい、前の晩は1本 US$1,000 のシャンパンを空けさせられて、場末の淫売宿で一夜を明かしたらしい。

そんな事情はつゆ知らず、とにかく25時間もパキに揺られてきた身体をどっかで休めたかった。とりあえず、カラベルホテルだっけか。

タクシーに乗ると、運転手の他に愛想の良い若者が同乗し、盛んに話しかけてくる。「ハハァ、読めたぞ」 案の定、人通りの少ない路地で停めると、メーターをクリアし、法外な料金を吹っかけてきましたよ。

「これがギリシャかい?」 最初っから楽しませてくれるでないの。

ワシは妥当と思われる額の札を投げつけ、走って逃げた。追っかけてきたらどうしようかと心配したが、表通りまで逃げてみると「カラベル・ホテル」の看板が見つかった。なぁんだ、根は悪い人達じゃなかったんだね。

さて、ロビーに入るとやっぱり奴等の姿は無かった。フロントに聞いてもそんな奴等は知らんという。う~む、どうすべきか頭が回らんが、とりあえず腹ごしらえしなきゃ。パキの肉無しカリーだけじゃ保ちそうにない。

「あれ~? こんなトコで何してんだよ?」

肩を叩かれて振り返ると懐かしい顔があった。おぉ、来てくれたのか。途方に暮れていたんだぜ。ハリ~感激! って、抱きつきたくなって腰を浮かしかけたが、縮れたアゴヒゲでどう見てもアラブ人にしか見えない別の友人の次の一言で正気に引き戻された。

「おぃぉぃ、本当に来ちゃったの? バッカだねぇ~」

くっ、自分でも馬鹿げてるとは思ってるけど、お前に言われたかねぇぞ!

悔しかったけど、アラブ人に弱みを見せちゃぁつけ上がるからなぁ。

「散歩がてらにちょっとね。たまには金髪もいいかと思って」

なぁんて強がりを言ってみたが、

「そうか、アテネ名物のシャンパンってのが凄いんだぜ。今夜は再会を祝して乾杯だな。当然お前の奢りだぜぃ。」

どこからそういう論理が出て来るんだ? ワシは君達に説教しに来たんだ…
と言いたかったのだが、だめだ、やっぱり身も心もアラブ人になったこいつらには勝てそうにない。おとなしく身を委ねるしか無さそうだ。

こうしてワシも怪しげなギリシャ神話の世界へと引きずり込まれていった。
by harryblog | 2004-04-16 21:02 | Travels | ↑Top  
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針生 徹

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