トンネルを抜けると眩い雪国だった。
峠に入る前にも降ってはいたが、やはり白さの度合いが違う。
昨日、一昨日に比べれば天気も良く、除雪も進んで通行止めや渋滞は無い。
だが、問題は道路ではなく、眠さにあったのだ。
仕事は事前にネット経由で状況を把握してあったので、客先に説明して決めた方針通りに導入設定するだけで半日で終了。もう一軒挨拶に寄って早めに帰ってきた。
薄暮の墨絵の中で、融けた雪が程良く固まりかけている。これなら抵抗も無く横に滑れそうだ。ライトを反射する路面をずっと凝視していると、このまま重い瞼を閉じて別の世界へ行ってみるか、なんて誘惑に吸い込まれてしまう。
CD のボリュームを上げ、全身の肌から眠気中枢へ針をぶち込む。
目論見は外れ、ハイハットの刻みが妙に心地良い。オーヴァードライブの超絶ギターに捩られ、眉間に力が入ってなんとか薄目がこじ開けられる。
気が付くと、いつの間にか自宅で子供達の顔に迎えられていた。
さて、奴等の餌をこしらえてやるか。