バイト遍歴を書いてみると、当時の揺れる思いが蘇る。
サッカーをやっていたから肉体労働が苦でなかったのと、知らない社会の仕組みが興味深くて色々やってきたものの、長くても半年から1年未満で辞めてしまったのは、実はこれでも一応大学生という身分だったからである。
都立の普通高校を停学を繰り返しながらもなんとか卒業し、受験勉強などは当然やっていないにも拘わらず、間違って或る大学へ入ってしまった。
しかし、3月生まれのワシにとってはまずは免許取得、そしてクルマを購入するのが第一優先順位だった。羽田のバイトで頭金を作って念願の箱スカを購入したが、毎月のローンとガソリン他の維持費は学業片手間のバイトでは賄えない。他にも遊びたい盛りには誘惑が多く、とにかく実入りのいい仕事に正社員として応募してしまうのであった。
で、毎年春になると、このままじゃいかんと学校へ行ってみる。フランス語などは同じ授業を1学期だけ3年受けたお陰で挨拶だけは得意になったり、とか。
ところが、夏になるとやっぱり遊びまくってしまい、秋からはまた正社員になる、それの繰り返しである。
もともと、何をして生きていくのか、それを見つけ、それに役立たせる為の勉強なのだろうから、教科書よりも実社会の方が教わることは多い。しかも稼いだ金で遊べる訳だから、大学を辞めるのは時間の問題であった。
肉体労働は一時の稼ぎとしてはいいが、そのままずっと追求する職業とするかは迷うところだ。なにしろまだ二十歳である。もっと違う世界へ飛び込んでみたいという思いもあった。
正式に大学を退学した後、2年半勤めたスポーツ雑貨卸時代の話を想い出しながら書いてみることにしよう。