南回りでやられた
from 面白い音楽は
リビアに駐在していた友人から手紙が届いた。隣のエジプトでの契約を終えて帰国する筈の別の友人と連絡を取りたい、との事だった。
リビアとエジプト。隣同士で同じアラブのイスラム圏なのに、狂人の登場によって犬猿の仲になってしまった。隣国だからテレビの天気予報の天気図とかで当然相手の国土も含まれるのだが、それは黒く塗りつぶして放映されるという、子供の喧嘩のような状態であった。
直接の交信は不可能だし、商社のロンドン支店経由のテレックスも、当局に関知されたらスパイ容疑で投獄されてしまう。だから、日本に居るワシに連絡係りをやれ、という事なのであった。休暇を合わせて第三国ギリシャ辺りで会いたいから段取りしておけ、だと。
君達ねぇ。事情は解るけど、忙しいワシがなんでそんなメッセンジャーを務めなきゃならんのだ? 悪いけど、ワシも参加させて貰うぜぃ。
という訳で、気が付いたらパキスタン航空南回りに乗っていた。昔、まだ成田が出来る前に羽田空港でバイトしたとき、パキにだけは乗りたくないなぁ、と思っていたのに…
日本人はシリアへ向かうという危なそうな若者だけ。飛行機に乗る金など持っている筈の無さそうなインド人のおばはん達。立派なスーツを着た中国人と金髪女のカップル。飛んでいる間中ウロウロ歩き回っていた神経質そうな白人。大声で騒ぐアラブ人。マニラからは一目でそれと分かる娘の一団。一列を一人で占有してひたすら眠る髭もじゃの老人…
カラチでトランジット。ホントに空港か? と疑ってしまう建物にイスラム音楽だろうか、「ハ~ニャ~ヌンレロヘ~」とかスピーカーから延々と流れてくる声を聴き続けていると、日本での生活の方が異常だったと思えてくるから不思議だ。簡単じゃねぇか洗脳なんて。
ところで、何でワシゃこんな所に居るんだ?